「銅貨一枚だよ、お兄ちゃん」

人懐っこい笑顔を見せる少女。

俺がフードを被っているせいか、俺の正体には気づいていない。

「ひとつもらえるかな。お釣りはいらないよ」

俺は懐から金貨を一枚取り出して、彼女に手渡し、花を受け取った。

そんな俺を眺め、今度はアンが俺をからかう。

「優しい王太子さま、数日ぶりに見た」

「可愛い子には優しくしないと」

ウィンクしてみせると、アンと目を合わせ微笑みを交わす。

そんな俺達の様子を間近で見ていた少女は、俺とアンの手を掴んだ。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、こっちに来て。すごいいいものがあるよ!」

少女は俺とアンを近くにある小さな宝飾店に連れて行く。

「お父さん、このお兄ちゃんがこの金貨でお花を買ってくれたの!お釣りはいらないって」