「それは……そうなんだけど……」

「抱くのが楽しみだな」

アンの耳元で囁くと、彼女は両手で自分の耳を塞いで文句を言う。

「ああ〜、冷やかさないで!」

「ほら、今度は山だ」

照れているアンに前方に見えるオリン山を指差して教える。

標高が高く、一年中雪で覆われている白い山。

インヴァネスとエッジウェアの国境にあるこの山には、伝説の王ラミレスが眠っていると伝えられている。

「いつも城から見えるオリン山だよね?凄く高い!……でも、ちょっと肌寒いね」

モコが山に近づくと冷気が漂ってきて、アンは自分の肩を抱いた。

「確かに鳥肌が立ってきた。モコ、少し離れて旋回してくれ」

モコにそう指示を出し、アンの身体を温めるようにギュッと抱き締める。