お金の価値を本当にはわかっていない。

平民からすれば、金貨十枚は一生暮らしていけるほどの大金。

そんな大金を持ち歩けば、フィオナに襲われなくても野盗に狙われる。

王都を彼女ひとりで歩かせるのも心配になってきた。

「でも……ずっと貯めてきたお金なのに」

アンは未練がましく言って、ハーッと溜め息をつく。

「当分城出しようなんて馬鹿な考えも浮かばないからいいじゃないか」

そんな皮肉を言えば、アンは城出したことに罪悪感を感じていたのか「うっ!」っと言葉に詰まった。

「……ごめんなさい。だって、あの時は……そうするしかないって思ったの」

「ちゃんと反省するんだな。また城出されては、俺の心臓が持たない」

そんな本音を口にすれば、アンは俺を振り返って恨みがましい視線を向けてくる。