「後で飴でも買ってやろうか?」

「……私、そんな子供じゃない」

アンはプウッと頰を膨らませてむくれる。

だが、突然手に口を当て、「あっ!」と叫んだ?

「どうした?何か変なものでも見つけたか?」

「ううん。ちょっと……忘れ物を……」

アンは俯いて言葉を濁した。

「城にか?」

俺が突っ込んで聞けば、アンはか細い声で言う。

「……森に」

バツが悪そうなアンを見てすぐに悟った。

「ああ、城出の時のか。何か大事なものでも?」

構わず『城出』と口に出すと、アンは居心地悪そうにボソッと呟く。

「食べ物と着替えと……あと金貨十枚」

「あの森は野盗も多い。森に戻っても、多分見つからないだろう。諦めろ」

金貨十枚と聞いて、ちょっと呆れた。

城育ちのアンは俺がいうのもなんだが世間知らずだ。