「クリス……好き」

子供の頃は、挨拶代わりに何度もクリスに『大好き』と口にした。

でも、自分がクリスとの身分の差を自覚するようになってからは、その言葉を自分の心の中に封印している。

起きている彼には言えないけど、眠っている彼になら言っても困らせることはない。

ずっとクリスとこうしていられたら、どんなにいいだろう。

ふと、彼の胸のあざが気になって、彼の胸元に目を向けた。

衣が少しはだけた隙間から黒いあざが見え隠れする。

そこに手を伸ばしてあざに触れた。

私の手のひらよりも大きなあざ。

私が触れたからか、ビクッとクリスの身体が反応して、彼は顔をしかめる。

起きたのかと思って「クリス……?」と声をかければ、彼の表情は和らいだ。

だが、まだ眠ったままだ。