彼の身体を下敷きにして寝そべる私。

「アン……側を離れるな」

はっきりとした声で告げるクリス。

起きた?

そう思ってクリスの顔に目を向けるが、彼が目を開ける様子はない。

ひょっとして寝言?

もうしばらく様子を見るが、クリスは目を閉じたまま、私を抱き締めている。

彼の胸に身体を預ければ、ドクン、ドクンと規則正しい鼓動が聞こえてきた。

昨日まで、クリスから離れることばかり考えていた。

なのに……寝言でも彼に名前を呼ばれて嬉しい自分がいる。

彼が望むならもっと側にいたい。

それが、クリスが他国の王女と本当に結婚するまでだとしても……今だけは側にいさせて。

クリスに顔を近づけると、ゆっくりとキスを落とした。