ごそごそと動いてクリスに向かい合い、彼の頰にそっと触れる。

私がこうして触れても、クリスはまだ起きない。

もっと自分を大切にして欲しい。

「クリス……私に隠してることまだあるの?」

いつも一緒にいたのに、クリスのことを知らなかった自分が馬鹿みたいに思えた。

それに……切ないよ。

クリスは王太子だ。

三年前から陛下が病で臥せっていて、代わりに彼が国を背負っている。

その重責はどろほどのものだろう。

国が混乱せずに私達が安心して日々生活しているのは彼のお陰だ。

国だけじゃない。

同じ三年前に私の母が亡くなった時も、クリスは私を慰めて支えてくれた。

私が彼の侍女になったのもちょうどその時だ。

でも……あれっ?