だが、宴の途中で王女の替え玉が俺に襲いかってきてラルフが捕らえたすぐ後に、アンの声が聞こえた。

『クリ……ス……』と……。

息も絶え絶えに呟くその声。

彼女に何かあったんだとすぐに悟った。

それからアンの姿をじかに見るまでは気が気じゃなくて……。

透視をしてアンの様子を確認すれば、彼女はフィオナとシャメル国王に襲われていた。

その時、心臓が止まりそうなくらい俺が焦っていたのは言うまでもない。

父が死んだ時だって、俺は冷静だった。

だが、相手がアンだと違う。

雷を落としてフィオナ達に衝撃を与え、すぐにアンの元に駆けつけた。

魔力が使えることを今日ほど有り難く思った日はない。

馬ならどんなに早く走らせても、間に合わなかっただろう。