──菜乃花に俺は、必要ない。

今の私にとっては、これ以上ないほどに辛い希望の提示だった。


「わかったら、俺らはもう行く。じゃあな、リュウ。お前も人のことばっか気にしてないで、自分のやるべきことを優先しろよ」

「あ……!」


一方的に言い終えて、私の手を掴んだ陸斗くんは、リュージくんをその場に置き去るように歩き出した。

私は突然のことに驚きながらも前を行く彼の背中を必死に追いかける。

チラリと背後へ目を向ければ視線の先のリュージくんが肩を震わせていて……胸が針で刺されたように酷く痛んだ。

……ごめんね、リュージくん。

だけどもう、どうすることもできないんだ。

だって私と朝陽は、いつかこうなる運命だった。

幼馴染という鎖を解いて、それぞれが別の道を歩んでいく。

出逢ったときから、そう決まっていたのだろう。

神様がそういう運命の下に私達を出会わせたのだから──仕方がない。





「……ごめんね、陸斗くん」


朝の学校は、なんだか少し忙しない。

そのまましばらく歩いた私達は、私の手を強く引く彼の背中に、そっと声を掛けた。