「あ……っ!」


陸斗くん、だ。

たった今学校に来たばかりなのか、首からヘッドホンをさげたままの彼は真っ直ぐに、驚き固まるリュージくんを見つめていた。


「りっくん……っ」

「リュウ。お前、そもそもデカくて目立つんだから、大声出したら余計に目立つんだよ」


陸斗くんのその言葉の通り、辺りを見れば私達を遠巻きに見る生徒たちの目がいくつもあった。

それに気付いて一瞬だけ勢いを失くしたリュージくんだったけれど、すぐに唇を引き結ぶと再び大きく息を吸う。


「ごめん……っ。でも今は、そんなの気にしてる場合じゃないんだよっ!」


力強い彼の声はいつだって、つきまとう影を払ってくれる。


「俺は、朝陽となのちゃんが、このままなんて嫌なんだ! だって俺は、ずっとそばで二人を見てきたから……っ。俺の知る二人は……少なくとも朝陽は、こんなこと絶対に望んでいなかったはずだ……」


だけど今、彼らしくもなく弱弱しく吐き出された声に、胸が痛みで小さく軋んだ。