「はいはーい!そこのお兄さん、お姉さーん!寄ってかないかーい?っていうか寄ってー!」
「…俺達ですか?」
「そうだともそうだとも!」
違う方法を考えようとした矢先、伊藤の一際大きな声が聞こえる。
どうやらいつきとメイドが店から出てきたようだ。
「ええっと…なんて言えばいいんだったっけ?」
「イベントに参加しないか、だ。千遊里」
「そうそう!イベントに参加しないかいっ!?」
「イベント…ですか。ナギ様、どうしますか?」
「私はいつき様に従います」
「わかりました。では、帰りましょう」
丁寧に断り、軽く頭を下げて立ち去ろうとする。
やっぱりこんな唐突なイベントには参加しねぇよな…。
俺達も移動しようとした時、また伊藤の大きな声が聞こえた。
「待って待って!楽しいからやろうよ!!ねっ?ねっ!?」
がっしりといつきとメイドの袖をそれぞれ掴み、引き止める。
体は机から乗り出していた。
「ですが、興味がな」
「なんとなんとっ景品もあるんだよっ!?」
「別に必要ではな」
「ね、志穂!えーっと…景品ってなんだったっけ?」
いつきの言葉は完全に無視し、ぐいぐいと言葉攻め。
隣では真夜が「さすが千遊里だ…」と呟いていた。
「有名イラストレーターのシト描き下ろしイラスト色紙で、更にサイン入り、だ。千遊里」
「そうそう!有名なんたらさんのサイン入り色紙だよっ!ここでしか手に入らないよ!」
「シトさんな。2文字くらい覚えろよ。それともうちゆじゃなくて志穂が話せば…?」
呆れたような声の梅宮。
景品はシトのサイン入り描き下ろしイラスト色紙。
有名なイラストレーターらしいが、正直俺は名前を聞いてもピンとこない。
「真夜はシトって知ってるか?」
「俺は知らないんですけど…志穂によるとネットじゃ結構有名らしいですよ」
「へぇ」
なるほど。ネットをよくやってる奴らからすれば有名人ってわけか。
だから笹島の妹は知っていて、有名と言っているわけだ。