悠くんは入口に立ったまま、部室内を見渡す。


「あれ?柊也先輩はまだ来てないんですか?」

「うん。まだ来てないよ」

「全く…いっちー先輩はいっつも部活に来るのが遅いですね」

「静音先輩、一回怒ってみたらどうです?」

「うーん…まぁ言っても直らないと思うよ」

『…と、言われていますよ。一ノ瀬さん』

「あ。噂をすれば柊也先輩。それといつき先輩も」


廊下から声が聞こえ、部室へと入ってきたのは一ノ瀬 柊也(イチノセ シュウヤ)と如月 いつき(キサラギ イツキ)くん。

柊也は先程、柚希ちゃんや悠くんが「遅い」と怒っていた人物だ。

ここの部員で、掛け持ちの部活があるわけではないが、大体来るのは遅く、一番最後。

更にたまに勝手にさぼって帰ることもある始末。

そんな本人は全く気にしていない様子で、何も言わずにソファへと座った。

無愛想で冷たいが、本当は世話焼きで優しい一面を持ってたりもする。

私の好きな人…つい最近、恋人同士になったのだが、その優しさが表に出るわけでもなく…

特になにも変わらず無愛想なままである。