昨日の事をふと思い返して、
今自分の行った事が正しかったどうかなんて
ここにきて、無意識に考え始めている。
でも、今更帰るわけにもいかないし、第一戻りたいとも思わない。

でもママも慶介さんも、きっと怒るだろうな。
反抗した事なんて、一度もなかったもんなぁ。



こんな事考えて弱気になっている自分をふと感じ、
慌ててぶんぶんと首を振る。
正しい間違いなんか考えるな。これは私の気持ちだ。
それよりも、これからの事を考えなきゃ。



手すりにもたれかかって、ふと考えた時だった。
突然スマホが鳴った。
急に過去に引き戻されたかのような感覚。

…もしかしてママかな。それとも慶介さんかな。



ドキドキしながら画面を覗き込む。
浮かび上がっていた文字は慶介さんだった。
冷静に深呼吸をして、電話に出た。



「もしもし」
「夏芽ちゃん?慶介だけど…机に置いてあった置手紙って…」



息を切らした慶介さんの声。
やっぱり心配して探してくれてるんだ。
目をぎゅっと閉じた。
ごめん、慶介さん。



「うん。私が書いた」



慶介さんはため息混じりに息を漏らした。
綾ちゃんと同じく私の浅はかな行動に呆れてるんだろう。



「昨日おばさんと喧嘩しちゃった事だよね?
あれはただ単に感情的になっただけだろうから、気にしないで戻っておいで」



私がママと口論したことを慶介さんはやっぱり察してた。
だけどそんな言葉で気持ちが楽になるほど、簡単じゃない。
帰ったってどうせ同じ毎日が待ってるだけだ。



「……気にしてるとかそんなんじゃない。もうあの家にいたくない」
「とりあえずもう暗いから戻りなさい、話はそれから聞く。おばさんも心配するから」



慶介さんが息を切らしてまた走り出した。
…探し回ってるのかな。
ブラブラしてたら時間の問題、見つかっちゃうかも。



「………ママはまだ知らないんだよね?じゃあ慶介さんから伝えておいてね」
「夏芽ちゃん、本気で言ってるの?」
「慶介さん。巻き込んじゃってごめん。でも私、しばらく帰るつもりないから」
「じゃあ、せめて居場所を教え―――」
「ごめん」
「夏―――」



いってる途中で電話を切ってやった。
そして繋がりを断ち切るように、私は電源を切った。

一人になりたい。
今はもう何も考えたくない。