秋人くんは笑いながら私の手を引っ張り、強引に隣に座らせる。



「なっちゃん、この人、早見千春ね。親みたいにガミガミうっさいの」
「ぶってねえよ。てめえの親よりマシだ」
「あとね。今いねーけど買い出しいってる店長が冬真さん。後戻ってくるだろうからとりあえず寛いでて」



一気にみんなの自己紹介をされても、反応に困る。
とりあえず秋人くんは能天気で、この千春さんは毎度それに振り回されてるのだけはわかる。
そして2人が正反対の性格なんだろうなって事も。

秋人くんは快く寛げって言ってるけど
明らかに千春くんの態度、歓迎してないし。
どうしていいかわからない。



秋人くんがまたもずいっと近寄り、こそっと耳打ちする。



「あぁ、春の事は気にすんな。アイツはいつもああだし、ムクれんのが特技っていうかさ」
「聴こえてんだよ」
「あは。バレた?嘘言ってないじゃん」



ケラケラ笑う秋人くんが付け足すようにまた耳元で囁く。



「春も冬真さんも俺を受け入れてくれた人だから、絶対大丈夫だよ」



根拠もないのに、ニカっと笑って頭を撫でる秋人くん。
ただの無神経なのか、お節介なのか。
どうしてここまで他人の反応にも構わず手助けしてくれるのかと
不思議な気持ちになった。



ふと千春くんに目を移すと、その鋭い視線は既に俯いていた。
ずっと睨まれてたからなかなか気づかなかったけど、
目を伏せた綺麗な長いまつ毛。
白い透明な肌。すらりとした鼻筋。
ふとした時に見る千春くんの顔は、普通の女の子よりすごくきれいだった。
思わず見とれてしまうほどで。


じっと見つめていたせいか千春くんの視線が少しこちらに滑る。
慌てて目を逸らす。

じっと見てたの、バレちゃったかな…。



千春さんは結局呆れながらも、磨いたグラスに飲み物を注いでそっと目の前に差し出してくれた。
戸惑いながらも顔を上げられずにいると。



「酒じゃないから飲めば」



そう零した。
歓迎されてないはずなのに、いいのかな…。



「い、いただきます」



とりあえず動揺を誤魔化す為に、
そのジュースを手にとりチビチビと飲み始めた。