「綾瀬穂花!」


いきなりフルネームを言われてびくっとする。


「…だよな?」


彼は不安そうにわたしの顔を覗き込む。


「う、ん。」


「よかったあ〜!ここで間違えたらまじでどうしようかと思った。」


結城悠は緊張が緩んだのか、くしゃっとほっとしたように笑った。


そしてそのあと、彼は何を言うでもなく、


ただしばらく受け取った桜の花びらを光にかざしていた。


わたしはその沈黙が怖くておどおどしていたけれど、彼は特に気にした様子もなかった。


そして何かをずっと考えていたのか、ふと、


「俺も、桜すげー好き。」


って言った。


それがなんだか嬉しくて、わたしも花びらを拾うとそれを光にかざした。