もっと、ちゃんと悠の話を聞いてあげればよかった。


時間さえあれば強く抱きしめてあげればよかった。


悠の最大の敵は時間だった。なのに、わたしはその宝物のような時間を、ちゃんと使えていなかった。


大粒の涙がこぼれ落ちて頰を伝う。悠の瞳からも涙が一粒流れた。



ーでも、全部もう遅い…っ。



『穂花…俺は、美菜と付き合ってた…けど、美菜には俺は重荷すぎたんだ。』



初めて悠の口から聞く美菜ちゃんの話。


録画された動画のわずかに残る時間が惜しくて、嗚咽が漏れ続ける。


この動画が終わったら、もう、二度と、悠の声は…っ



『それに俺も、美菜のことは、好きというよりかは、誰かに側に居て欲しかっただけだったのかもしれねえ。』


そう言って微かに微笑む悠があまりにも寂しそうでわたしは悠の名を力一杯叫ぶ。


「悠っ!わたしがそばにいるっ…っ!」


だけど、もうその声すらも悠には届かない。


『穂花、俺のそばにいてくれて、ありがとうな。』


悠がわたしに優しく笑いかける。


『たくさん辛い思いさせたけど、それでも、ずっと俺の隣で笑ってくれていて、ありがとう。』


「悠っ…っゆ…うう…」




『生きたかったなあ…。』




神様は不公平だ。


『俺さ…穂花に嘘ばっかりついた。』


「…っ…。」


『あの懐中電灯…たまたま持ってて、これがあったら、穂花も信じてくれるんじゃねえかって思った。』


「そこまでしてっ…っ」


『きっと穂花が俺のそばにいたら…苦しめるだけだと思った。』


「わたしはっ…悠のそばにいることが幸せっ…。」


『俺さ、色んなこと諦めてきた。大好きなサッカーだって、友達と遊ぶことだって…でもな…。」


悠は顔を歪めた。





『穂花だけは、諦めきれなかった。』