「お母さん、ちょっと散歩に行ってくるね。」 そう言って、ノートを袋に入れて家を出た。 今はあの家にいたくなかった。 みんなの気遣いが、逆に傷つくから。 桜の木々の下をくぐる。 青い葉が舞い落ちる。 今は、桜も見たくない。 行くあてもなく、わたしは袋を抱えて住宅街を抜ける。