それから、帰る当日となり私はくるなちゃんと矢吹くんとで駅へと向かっていた。


なぜか、矢吹くんまでもが駅へと向かっている訳は、おじいちゃんが「送ってあげて」と言ったからである。


柚里夏ちゃんへの挨拶は昨日の内にしておいて、「当日は来なくていい」と言われたので私は行かなかった。


毎回同じことを言われているので、別にいいかと思っている。


前で矢吹くんとくるなちゃんは仲良さそうにお喋りをしていて、私は2人の後ろで歩いていた。



「あ、そうだ」


ふいにくるなちゃんが立ち止まり声を出した。


「どうしたの?」


「お母さんから頼まれ物されていたんだった」


「頼まれ物?」


そんな事、私には言っていなかったけど。


「私はされなかったけど?」


「うん、後から思い出したんだって」


「そうなんだ」


「じゃあ、あそこのお店で買い物してくるから、先に駅に向かってて」


そう言って、くるなちゃんは近くにある小売店に向かっていった。



「………」


2人きりになり、とりあえず「先に行ってて」と言われたので、駅へと向かう事にした。



「………」


「………」


またあの時にように沈黙しながら目的地に向かう。


ただ、何を話したらいいのか分からず、そのまま沈黙が続いている。



「ねえ、ことはちゃん」


すると、ふいに矢吹くんが声を掛けてくる。


「何?」


「気持ちってどこから来るんだろうね」


「えっ」


何を言い出すのかと思えば、何やら物思いに更けたような言葉を向けられる。


「よく分からないんだよね、本当に。俺の心はどこにあるのだろうかと、気持ちは本当ここにあるのかととか。どんなに考えても自分が自分ではない気がして、時々恐怖で心が壊れそうになる。…おこがましい程に、曖昧で不安定でよく分からない」


それは、矢吹くんの心の叫びなのかもしれない。


もしかすると、矢吹くんはずっと見えない恐怖と戦い、その恐怖で自分が見えなくなってしまっているのだろうか。


私は何もできる事などないのだろう。


彼を助けたくても、自分の感情と同情の想いがあるから無理には手を伸ばす事はできない。


臆病で弱虫で意気地なしなダメダメな性格。


直したくても直すことができない。


そんな自分が嫌で嫌いで大嫌いで、だけどどうする事もできないのも事実だ。