夏の生温い緩い風が肌や髪に当たりなびく。


そのふんわりした風が反するように、私の心もどこかふんわりしている。


そんな中、私は意を持って彼に向けた。


「矢吹くん、私にも興味がないって言ってたよね」


すると、その言葉を向けるいなや、矢吹くんは先程の優しい表情から少し冷たさのある表情を向けられた。


「ああ、そうだね。それが何?」


やはり他人事みたいな言い方だ。


彼にとっては私は本当にどうでもいい事なのだろう。


「私ね…っ」


(ダメだ。こんな理屈みたいな言い方)


今の言い方を言っても彼には伝わる訳がない。


もっと単的に簡潔にはっきり言わないと伝わらない気がする。


おそらく矢吹くんに、理屈みたいな言葉を述べても伝わらない気がした。


私はもっと伝わりやすく心を持った言い方でぶつけた。


「私…っ矢吹くんの事、知りたいの。
仲良くなりたいの!」


「…えっ」


「それは、いけない事かな」


私のぶつけた言葉に矢吹くんは驚愕の瞳を向けられた。


同時に私の思いが矢吹くんに伝わる訳もなく、むしろ疑問の言葉を嘆かれる。


「なんで? そんな事言われても、何も思わないのに。
興味なんか持ったりしないよ?」


「…っ」


結局、無駄な想いをぶつけだったのかもしれない。


それでも、矢吹くんに言いたかったんだ。


「ことはちゃんはさ、こんな俺と仲良くなったって何もつまらないだけだよ。俺は誰とでも嘘の愛想笑いで嘘の感情で誰とでも付き合いは出来るんだよ。
でも、普通そんな事思われて悲しくない? 嫌でしょ?」


「………」


矢吹くんの言う通り、いくら他人でもそんな態度取られていたら気分悪いと思うけど。


けど……。


それは矢吹くんだから思った事なのに。


「私は誰でも言い訳じゃないもん」


私は誰に対しても矢吹くんと同じようなセリフを言う訳じゃない。


それに私は初めての人に対し自ら寄ったりする事ない。


話し掛ける事は出来ても、心に近寄るような事はできない。


「そんなのできないのに」


「じゃあ、なんで俺に近寄ろうとするの?」


それは……。


矢吹くんの問いに悩むように考えてみるが、何ども考えても同じ事しか出なかった。



「分からない」


「はっ?」


悩んで思った事じゃなくて、ただ自然に思ったんだ。


なぜ矢吹くんと仲良くなりたいのか、知りたいと思ったのか、本気で分からなくて、気が付いたらそういう風に感じていたんだ。