そういや思ったけど、矢吹くんの服っていつもかわいいデザインの服だと、なんとなく思った。


この歳で普通の男子が来ている服よりはだいぶかわいいめで、むしろ普通の男子が来ている人は少ないんじゃないかって思うぐらいだ。


どこのブランドの服なんだろうか。


「ん? どうしたの?」


「あ、いや。矢吹くんの服ってかわいいデザインだなって思って。ドットとかチェックとか動物柄とか星とか、あと個性的だし」


この前着ていた服は猫耳やしっぽが付いてたパーカーだったり、やたら長めのTシャツだったり、基本的に柄Tシャツばかりで、パーカーも個性的なデザインだったり、あまり普通の服っていう感じがない。


むしろ可愛すぎて色々びっくりするけど。


時々、女の子もの着ているような気もするんだけど、気のせいだろうか。


「ああ、かわいい服狙って買ってるからね」


そう言って、着ているTシャツを触る。


今日着ているTシャツは、ふわふわしたメルヘン柄のデザインでかわいい柄だ。


「……そうなんだ」


「そんなに変? 俺的には普通だと思うんだけど」


「ううん、全然。いいと思うよ」


「そっか」


普通の男子からすればどうなんだろうって思ちゃうけど、でも矢吹くんだから似合うのかもしんない。


矢吹くんだからあまり違和感を感じないんだろう。



「ところでことはちゃん。ここに連れてきたのはどうして? ここってあまり人が来ない場所だよね」


「あ、うん。話しをするのなら、人がいない場所がいない場所がいいかと思って」


「ふーん」


と言ってもこの辺はあんまり歩いている人って少ないからここに来た意味があるのかは不明だけど。


「で、話しって何?」


「えっあ…うん」


私はそっと矢吹くんの方へと顔を向ける。


が、いざ本人を前にすると戸惑って上手く言葉が出てこない。


「えっとね、その…あのね…」


(ああ、もう。
なんでこういう時に限って言葉が出ないの)


昔はもっとなんでも言えてたのに、いつから言えなくなったんだろう。


本当意気地なしになっちゃったな。


(ダメダメ…。言うって決めて連れてきたんだからっ)


言わなきゃ言わなきゃ言わなきゃ。


弱い心に自己暗示しながら何度も同じ言葉を繰り返す。


(よし!)


「あ、あのねっ矢吹くん」


「うん?」


酷く緊張した胸を心で抑えつつ、私は矢吹くんに向けて口を開いた。