「矢吹くんこっち!」


「ことはちゃん? 何? 急に」


翌日、私は矢吹くんを連れてある場所へと向かった。


そこは小さい頃によく遊んだ場所で、ここに遊びに来た際に柚里夏ちゃん…とは最近はあまり来ること少ないけど、かなるお兄ちゃんやくるなちゃんとよく遊びに来ている。


この辺りは田舎でほとんど何もないところで、子供の遊び場所など限られていて公園とか庭園なんてある訳もなく、代わりにあるとしたら原っぱとか草原があるぐらいだ。


「見事な程に緑一面の草原だね」


「うん、でも広くて自然豊かって感じだよね!」


「そうだね」


確かに何もなくて不便だったりするけど、自然っていう感じが私は大好きなんだ。


「矢吹くんは、あまり好きじゃない?」


「うーん、ここでの記憶ってほとんどないし、都会で慣れてるからかもしんない」


「そっか」


矢吹くんの生活環境はずっと都会だから、田舎のこの町はあんまりって感じになっちゃうのか。


私も似たようなものだけど、私の場合は毎年来ててこの田舎が大好きだって思ってる。


矢吹くん的には不便だからそう思っちゃうのか。


私は不便でも楽しいって思えるからいいけど。


そりゃあ、虫は大きいし冬は寒いしかわいいお店もないけど、私は出来ればここで住みたいと思ってるぐらい。


「ことはちゃんはここが好きなんだ」


「うん」


「じゃあ、住んだらいいんじゃないの?」


「あーうん。…そうなんだけど」


矢吹くんの言葉にばつが悪そうに目線を逸らす。


出来れば住みたいとは思うけど、でもどう思っても住むという選択肢にはならいんだ。


それが私には出来ないんだ。


そうあの時から……。


あの時起きてしまった事が原因で、何でもある東京の方へと引っ越したのだから。


「だって、かわいい服とかないしね」


苦笑いしながら誤魔化す言葉を述べる。


「ああ、確かにねー。
通販とか使わなきゃだね。送料は高く付くけど」


「でしょー」


「でも、たまにだけどちょくちょく東京行くことあるから、その際にまとめて買えばいいだろうけど」


(ああ、そっか)


そういう手段もあるのか、なるほど。