柚里夏ちゃんの家を出ておばあちゃんの家まで走って帰った。


歩くより走る方が気持ちが晴れていく気がして気持ちよくて、それに昔から走る事が好きだったから。


長時間走る事は出来なくても、走っていると心が嬉しくなる。



「あら、ことは。また走ってたの?」


おばあちゃん家の前で止まるとくるなちゃんが家の外に出てた。


「うん。なんかうずうずしちゃって、ちょっくら走ってくるよ、考え事したいし」


そう言って、走りだした。


「晩御飯まで帰ってきてよね。
あと、ちゃんと休憩とってね」


「はーい」


走りだす私にくるなちゃんの忠告に元気よく返事をした。



矢吹くんは人の愛情や想いに向けられてきても、おそらく興味持てないせいで無視してしまっているんだ。


お父さんによって゛おまけ゛という扱いが頭の中でこびり付いて、まるで洗脳のような感覚を持ってしまったせいか人に興味持てない感情になってしまったんだと思う。


それが、最近だったらまだそこまだ良かったのかもしれない。


でも、それが長年続いていて、お父さんがいなくなっても頭の中にこびり付いてしまっているから、取れるわけもなくおかしな考えに陥ってしまっているんだ。


矢吹くんに私の事を何とも思わない表情で『興味がない』って言われた時、本気で悲しくて悔しい気持ちでいっぱいいっぱいだった。


でも、冷静になってよくよく考えると矢吹くんの心や瞳には映り入るスキが全くないんだ。


だから、どんなに思っても意味がないと言えるんだ。



「はあ…はあ…は」


ぴたっと走る足を止める。


「………」


あの日、駅のホームでぶつかった時に矢吹くんを見て、初めて男の子に対して綺麗だと思った。


私の身近にいる人の中で、綺麗な人はくるなちゃん以外見た事がなくて、その中で男の子で綺麗でかわいい男の子を見たのは矢吹くんが初めてだった。


矢吹くんとおばあちゃん家で再会した時に思った、これは何かの縁できっと何かあるんだと思った同時に、私は矢吹くんと仲良くなりたいと思った。


だけど、矢吹くんはおじいちゃん以外誰一人として興味を持とうとせず、それ以前に心や感情が空っぽで何にもなくて欠けた人だった。


それでも私は、矢吹くんに興味を持ってほしいと思った。


私には言えない秘密が多いけど、せめて私という存在だけでも興味を持ってほしいと思った。