すると、矢吹くんの目が真っすぐに私へと向けられる。


「なんで?」


「えっ?」


「何が嫌なの? どうしてそんなに人に言いたくないの? 人に偏見持たれるから? 変な事言われるから?
なんで?」


「………」


質問攻めのように矢吹くんは問い詰めてくる。


「なんで?」と聞かれても、確かに変に思われるからというのもあるけど、ただ私自身が嫌なだけだと思う。



「それは…その……。
変に思われるのは偏見に思われるのも全部が嫌なの。
それ以上にこんな事情を抱えてる私自身が嫌なの。
だって…理解してくれるようなものじゃないでしょ」


私は正論のつもりで答えたはずだった。


だけど、矢吹くんにとってはおかしな返答だったのかもしれない。


「……そんなの無視しておけばいいんじゃないの?」


「えっ」


矢吹くんの言葉に思わず耳を疑った。



゛無視?゛



「そんなの相手にしてるだけ無駄でしょ。
理解してくれない奴なんかほっとけばいい。どうせ、何伝えても分かんないんだから、偏見見る奴らなら見さしておけばいいでしょ? お気楽な奴だって思っておけばいいと思うけど。いったい君は何に対して怖がる必要があるの?,意味がわからない」


「……っ」



何を言っているのだろうか彼は。


そんなの普通嫌じゃない?


『変に思われたらどうしよう』とか『嫌われたらどうしよう』とか思うものじゃないの?


なのに、なんで彼はそんな呆れた表情で分かったようセリフが出てくるのだろうか?



「何言ってるの矢吹くん? 考えたりしないの? 普通思う事じゃないの? 変に思われたり嫌われたらどうしようとか、そういうの考えたりしない? それに人に言うなんて、すごく勇気の言う事でしょ?」


「……はい?」


私の必死な思いに矢吹くん頭を傾けて疑問を向けられた。


「……っ」



この時私は思った。


彼にはそういう普通の感情というものがないんだと。


だから、自分のお父さんに対して゛何されてもどうでもいい゛という感情が出てくるんだと。


そう思うと矢吹くんに対して悲しくなった。