「………」


くるなちゃんが来たって事はばれちゃうのだろうか。


矢吹くん以外はみんな知ってるけど、あんな様子見ちゃったから時間の問題だろう。


きっと無理なんだろう。



《コンコン》


「!」


「ことはちゃん」


ノック音が聞こえ扉の方に向けると、矢吹くんが入ってきた。


「矢吹くん?……えっ」


矢吹くんは扉を閉めるとズンズンと近付き私の横に座り込んだ。


「あの、何か…」


「あ、えっと…別に」


矢吹くんはどこかバツが悪そうにあさっての方向を見ながら髪を触る。


「?」


「あのさ…」


「もしかして聞いたの?」


もしかしたら、私のトラウマの事を聞いて言いづらいのかもしれない。


「ああ、うん、まあ」


「そっか、聞いちゃったんだね」


私は少し悲しげな表情で苦笑いを向けた。


「あ、でも。詳しくは聞いてないんだけどね」


「……そうなんだ、よかった」


「………」


詳しくは聞いてないんだ。


その言葉を聞いて、少しだけほっと安心の溜息を出した。