「!?」


その単語にくるなさんはピクっと反応する。


やっぱりそうなんだ。


くるなさんは目をそむけながらぽつりと答える。


「そう、あの子には血がダメなの。
それも、異常な程にね」


「………」



゛異常な程゛



トラウマみたいなものでパニックを起こすという感じなのか。


そういうのはよく分からないけど、そう言った類のものだろう。


「なんでそんな事に?」


本人が知りたくない情報を俺があれこれ聞くのもあれだけど、少しだけ気になる。


「うーん、あまり詳しくは言えないんだけど、昔ちょっとした事件があってね、それ以来だめなの」


「ふ――ん」


「あの子、自分の抱えてる問題知られるの嫌がってるから」



゛嫌ってる゛か。



俺は誰に何話しても平気だけど、嫌がる子もいるのか。


そうだよな……。


俺が変なだけでことはちゃんは普通だもんな。



「それってトラウマみたいなものなんだよね?
それは治らないの?」


治り方って結構難しい感じに思えるけど。


「克服したら治るかもしれないけど、でも治ったら昔みたいになるのかな」


(昔?)


くるなさんは少し悲しそうな笑いで微笑む。


「昔はね、もっと明るくて元気いっぱいで物動じない悩む事もほとんどしない元気いっぱいな女の子だったんだよ。確かに今でも元気で明るいけど、私からすれば暗い方なの、いつの間にか怖い物でいっぱいになってしまっているから。しょうがないって思ってても悲しいんだよね。それに、゛お姉ちゃん゛って呼んでくれないんだよね、ずっと」


「………」


昔はもっと明るかったんだ・……。


今でも充分明るいけどくるなさんにすれば違うんだろう。


別に俺にとってはどうでもいい事なのに、なんとなくそう思わない気持ちになってるこれはなんだろう。


他人に興味持ってもいい事ないのに。



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それから、くるなさんから話しを聞いた後、そっとことはちゃんの部屋の扉を覗いてみる。


ことはちゃんは静かに夏休みの宿題をしているけど、その様子はどこか沈んでいるようにも見えた。


おそらくあの状況を俺に見られた事について思っているのだろうか。


「………」


(はあ、めんどくさいな)


こんなの俺が思うような事じゃないのに。


めんどくさい子だ……。


とは言ってもほっておけば済む事だけど、なんかほっとけないし、だからと言っても無闇に聞いても困るだろうけど。


「しょうがないな、もう……」


そして、軽くことはちゃんの部屋の扉を軽く叩いた。




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