気持ち悪い………っ



気持ち悪い……っ



気持ち悪い……!!



口を抑えて我慢しながら慌てて洗面所に押し入るように入り、我慢が途切れたかのように流し台に向けて口に出現した汚物を「おえっ」と声を出しながら吐き出す。


「うっあ……はあはあはあ」


吐いた後も息が荒く呼吸困難のように容態が安定しない。


「ことはちゃん、大丈夫?」


私の様子に聞きつけたのか洗面所にかなるお兄ちゃんが心配しながら入って、私の背中を優しく撫でる。


「はあ…はあ…はあ」


「見ちゃったんだ」


「……うん…はあ」


「そっか」


お兄ちゃんは何かを言うことなく、そのまま擦り続けてくれた。


(本当、だめだな私は……治ってくれない)



ようやく気持ちが落ち着いた頃、矢吹くんが洗面所に顔を出した。


「ことはちゃん。あ、かなるさん」


「やあ」


矢吹くんはかなるお兄ちゃんを見てお兄ちゃんはうっすらした微笑みを向けた。


「あ、矢吹くん、絆創膏だったよね」


矢吹くんの姿にヨロヨロと立ち上がる。


「あ、大丈夫?」


立ち上がる姿にお兄ちゃんは心配そうに手を掴む。


「うん、もう平気だから」


「あ、えっと、もう貰ったから」


そう言って矢吹くんは絆創膏を付けた指を見せる。


「あ、そう、ごめんね」


ふらふらと揺れる体で洗面所を出てキッチンに向う。


その様子を矢吹くんは心配そうに付いてくる。


「っ」


「ことはちゃんっ」


リビングに入るふとした段差にふらついた体のせいか、すぐに倒れそうになる。


「だ、大丈夫?」


「あ…」


矢吹くんは背後から抱きしめるかのように止めに入ってくる。


「っ」


突然の事に思わずびっくりして、という以前にそんな風な事をかなるお兄ちゃん以外でされる事が今までなかったので、本当にびっくりして恥ずかしさに顔が赤くなる。


「ああああ…だ、大丈夫…」


矢吹くんの行為に少しだけ気がはっきりして、ばっと矢吹くんから離れる。


「…ことはちゃん、大丈夫なの?
ふらふらしてて危なかっしいけど」


矢吹くんは私にした行為に特に気にする事なく、私の顔を覗き込んでくる。


「もう、大丈夫だから」


「そう、ならいいけど」



「………」


矢吹くんすごく驚いた目をしていた


(当たりまえだよね)


こんな変な態度見せてしまったのだから。



゛血を見ると気持ち悪くなる゛なんて普通の状態じゃないから。



でも、矢吹くんに本当の事を言うべきだけど、それが私には言えないんだ。


言ったらどうなるか考えただけで恐ろしく怖い。


「……はあ」


どうしたら良いのだろう。


矢吹くんは他人に自分の事情をなんでああも躊躇く言えるんだろうか。


それが私には分からない。


分からない……。