落ち着かせないと、まだ見てないのだから。


(矢吹くんに変に思われるっ変に思われるっ変に…っ)


頭では落ち着かせようと冷静な口調を掛けるものの、気持ちは焦る一方で落ち着かせる感情にはなろうとはしなかった。


「ことはちゃん…どうしたの? あっ」


矢吹くんが私を心配して近付こうとしたその時⸺。


ぽとっとコップのガラスの破片で切って怪我してしまった指から一粒血の雫が落ちたのだった。


その一粒の血が落ちた瞬間、まるでスローモーションの画のような感覚でゆっくりと瞳に映り入った。


その瞬間かたが外れたように、冷静に保っていたはずの感情や全てに対し痙攣を起こし近くにあった食器棚に背中が当たり、震える手で口を覆った。


「いや…いや……」


「ことはちゃん…?」


矢吹くんが更に近付こうした時⸺。


「ああっ……ううっ!?」


「ことはちゃん!?」


気が付くと勝手に体が動いててその場から走りだし、その途中に掃除機を持ってきたおばあちゃんに鉢あったもののおばあちゃんに気付く事なく、一心不乱である場所へと向かった。



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突然震えながらキッチンから去っていったことはちゃん。


いったいなにがあったというのだろうか。


様子が異常におかしかったけど。


「……ことはちゃん?」


「あのことはちゃん、何か変だったんですけど」


ちょうどおばあさんが掃除機を持ってキッチンに現れる。


「もしかして…怪我したの?」


「えっああ、切っちゃって」


そう言ってガラスの破片で切ってしまった指を見せる。


「大変!?」


「えっ」


゛怪我゛という言葉に反応したのか、ことはちゃんと同じように慌ててキッチンから出て行く。


「……何?」


何が何だか分からない状況に戸惑いを感じる。


「とりあえず、ばい菌入るから手当てしたいんだけど。仕方ない自分で探すか」




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