駅でぶつかった女の子が灯良さんのお孫さんだった。


《月野 ことはちゃん》


夜、誰も起きていない時間に彼女は俺と灯良さんの会話を聞いてしまっていたようで、聞いてしまったものは仕方ないし、いつかはこの家の人達に話すつもりだった。


どちらにせよ、大した事でもないのでどうとも思ってなかった。


俺は灯良さんに対しては少しだけ感情があったものの、他の人達にはいつも通りの仮面を被って接していた。


その子にも同じように。


ここに来て驚いたのは、楽しそうで賑やかな家庭だという事だ。


これがいわゆる幸せで思い描いていた家庭なのだろう。


灯良さんは彼女に俺の事情を話してくれた後、自分からも話してあげた。


それだけで終わるはずだったのに、なぜか気まずい空気に陥ってしまった。


いつもなら゛可哀想゛゛辛かったんだね゛とか言われて終わりなのに、なぜか悲しそうな目で言われた。


(なぜだ……)


しかも、なんか元気ない……。


「なんか突然避けるような態度取るようになったよ」



それから2日程が経って、ことはちゃんはなぜか話し掛けて来なくなった。


それを灯良さんに話すと⸺。


「あーそうか。やっぱりそうなったか。
自分の事と重ねあわせたんかな〜」


(自分の事?)


よく分からない事を言って去っていった。



「……はあ」


(どうしたらいいんだ、これ)


おかしな子だな、ことはちゃんって。


その時のことはちゃんの印象は、゛おかしな子゛という印象だった。



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