「……うーん…うーん……うーん」


「…ねえ、うるさいんだけど」


唸る私に柚里夏ちゃんは注意してくるが、私は続けて唸り続けた。


「…はあ。
だからさ本人に言えばいいんじゃないの」


「そうは言っても難しいよ」


「ことはのおじいちゃんだって本人に言えばいいって言ってたから、そのまま言えばいいんじゃない?」


「そのまま…ってそんなはっきり言うの?」


「はっきり言わなきゃわかんないでしょ」


「はっきりなんて矢吹くんに失礼だよ」


はっきりなんてどう言えって言うのだろうか。


人の事情に突っ込むなんて失礼に当たる気がして仕方ないというのに。


「ほんと、ことはってそういう事に対しては超ネガティブだよね」


「うーん、だって…誰かの事情に突っ込んだりアドバイスする資格なんて私にはないんだもん」


そう、そんな資格なんかない。


人の事情に突っ込んだりアドバイスするなんて、おこがましくて自分が嫌になって心が嫌いになりそうになる。


「資格ね…そんなの必要ないと思うけど。ことはは自分の事情と同じように見過ぎなのよ。そこまで相手は気にしてないだから、むしろ気にしすぎる方が失礼に当たるんじゃない?」


「そうなのかな…」


私は気にしすぎるのだろうか。


でも、私は気にしておかないとおかしくなってしまうもの。


「ことはってさ、いつなったらそれ治るの?」


「えっあーいつか?」


「いつかね、もうずっとじゃん」


「あ、はは…は」


いつになったらと言われても、好きでこうなった訳じゃないから自分でも把握しきれない。


気が付いた時には既にこんな風になってしまったのだから。



私には矢吹くんと同じようにある事情を抱えている。


だけど、私は矢吹くんのように明るくできるものではなく、むしろ他人にその事を言うのにかなり抵抗を持っている。


どうして矢吹くんはそんな柔らかく言っていたんだろう。


もし私の事情を矢吹くんに言ったら私はどうなるんだろうか、計り知れなくて恐ろしい。


「怖くて仕方なくてどうしようもないもん。
柚里夏ちゃんには分かんないよ…。私はもう昔みたいに無邪気な気持ちにはいられないんだもん。治したくても治すことが出来ないんだから」


だから、人の事情に自分から突っ込む勇気なんかなく、相談されてもアドバイスもできず、曖昧にしか答えれない。


どうしてもはっきり言えないのが事実なんだ。