「ああー宿題やんないと」


「ことはちゃん」


朝食終えた後、呟きながら自室へ戻ろうと廊下に出るとおじいちゃんに声を掛けられた。


「お、おじいちゃん」


おじいちゃんに対してもなんとなく戸惑いを感じた。


おじいちゃんは矢吹くんの事情を知っているから、聞けば答えてくれると思うけど、私自らは言えないんだ。


「どうしたの?」


「ことはちゃん。昨日聞いとったよな?」


「へ?」


(もしかしてバレてた?)


やっぱりあの時ちらっと見たのって私がいた事に気付いてたんだ。


「あ、あの…わざとじゃないの! 目が冷めちゃったから水飲みに降りてきて戻ろうとしたら、音がしたから見に来たら矢吹くんが居て、それで何してるのかなって声掛けようと思ったらおじいちゃんが出てきたから、それで…たまたま聞いちゃっただけなの…」


言い訳のような言い方だけど、だんだんその口調が小さくなっていく。


「いや、怒っとらんよ。まあ、聞いてもうたのは仕方ないしね。やっぱり、あれはことはちゃんだったか」


「ごめんなさい……」


申し訳そうにする私におじいちゃんは、続けて言葉を発する。


「まあ、聞いてもうた事はしゃあないし。
気になっとる?」


「あ…えっと……うーん」


言葉にならない曖昧な相槌をするが、その目線は少しだけ泳いでいる。


私はこういう時どういう反応するべきなのかわからない。


はっきりと゛うん゛とも゛ううん゛とも言えず、はっきりしない反応になってしまう。


「本当はいつかは話すつもりだと、矢吹くんも言っとたんだけど、今回は仕方ないから話すな。でも、詳しく知りたいなら矢吹くん本人に聞いてな」


「う、うん…」


そしておじいちゃんは、矢吹くんの事を話し始めた。