「ふぁあ…」


夜中、目が覚めてしまったので水を飲みに1階のキッチンへと降りた。



「ふう…ん?」


水を飲み終え、2階に戻ろうと階段を上がろうとした時、ふと縁側の方から音が聞こえてきた。


誰かいるのかな?っと思いながらゆっくりと縁側の廊下に近付きを曲がり角から縁側を覗いた。


「あれは」


縁側の窓ガラス前にはぽつんと座り込み夜空に目を向けて矢吹くんが物思いに見つめていた。


(何してるんだろう……?)


「……」


夜空に向ける矢吹くんの瞳はどこか寂しそうにも見えた。


声を掛けてみようと足を動かした時、縁側の後ろのふすまが開き、おじいちゃんが矢吹くんに声を掛けた。


「どうしたんだい、眠れないのか?」


「あ、いえまあ」


(そっか)


あそこの部屋っておじいちゃんとおばあちゃんの部屋だ。


おじいちゃんは矢吹くんの姿に気付き声を掛けたんだ。


私は廊下の曲がり角の壁を背に2人の話しに耳を傾けた。


「………」


(盗み聞きみたいでよくないよね)


とは思いつつなんとなく矢吹くんのあの悲しげな瞳が気になって仕方なく、そこから動けずにいた。



「どうだい、ここの生活は。慣れたかい?」


「どうでしょうね」


「そうだな、まだ1週間も経ってもんもな」


「はい。でも、ここの人達はみんな仲が良くて明るくて楽しそうですね」


「そうだな、少し賑やか過ぎるがな」


「そうなんですね。
俺からすれば、不思議な光景に見えるかな」


「そうか。君にとってはそうなるよな」


「まあ」


(なんだろう……)


なぜか2人の会話が曖昧な会話に聞こえるのはどうしてだろう。



「あの」


「ん?」


「この度は俺を迎え入れてくださってありがとうございました。じいちゃんが頼んでくれたはいえ、本当にありがとうございました」


矢吹くんは正座をし丁寧に深々と頭を下げて、おじいちゃんにお礼を告げる。


そんな丁寧な姿勢におじいちゃんは戸惑いワタワタする。


「や、矢吹くん…そんなかしこまないで。
それに君を受け入れたいとは思ったのは僕の判断だよ」


「……そうですか」


その時見えた矢吹くんの表情はうっすら微笑んでいるように見えた。


「しかし、突然だったの。
まさか光壱が先に亡くなるとは」


「でも、じいちゃんは最後にあなたに会えて喜んでました。ありがとうございます、お葬式も手伝ってくれて」


「いやいや」


(゛光壱゛さん?)


おじいちゃんの口から出た誰かの名前は、どこかで聞いたような気がした。


「えっと」


矢吹くんはおじいちゃんのお知り合いのお孫さん…。


知り合い……光壱さん…。


「!」


(まさか…矢吹くんは)


ピンと来た人に私は思わず目を開き驚きを見せる。


(矢吹くんはあの光壱さんのお孫さんなの?)


でも、そう言われるとなんとなく理解できる部分もあった。


だって光壱さんと矢吹くんはとても似ている部分があるから。


私は驚きながらも2人の会話の続きに耳を傾けた。