翌朝、朝食を摂った後、しばらくして何かしら矢吹くんの部屋から騒がしい声が聞こえてくる。


「ひゃあ、可愛い! なにこれっ」


「恵お姉ちゃん?」


(何をしているんだろう?)


恵お姉ちゃんの声に気になった私は、矢吹くんの部屋へと向かった。



そういえば、今日お姉ちゃんは仕事休みなんだったけ?


お姉ちゃんの仕事は美容師でお店がたくさんある町の美容室で美容師として働いている。


普段、家族に対しては何かしら口の悪いお姉ちゃんだけど、美容室に来るお客さんには人気がある美容師なんだそうだ。


確かに、顔やルックスは美人だが、性格や口調はまったく美人ではないのだが、おそらくお客さんや職場仲間の人は騙されているんだろうな、といつも思う。


少し憐れみを感じてしまうが。


言わば、演技をしているのだろう。


よくとまあ、毎日毎日、自分を演技しながらやっているものだ。


ほんの少しだけ関心している。


お姉ちゃんは普段褒める所など一切ないが、そこだけは褒めている部分だ。


お姉ちゃんからすれば、嫌味しか聞こえないと言われているが。


私自身そんなつもりはさらさないのだけど。



扉を開けひょこっと覗くと、何やらお姉ちゃんが矢吹くんの荷物解きの邪魔をしているように見えた。


「お、お姉ちゃん…何やってんの? 邪魔してるの?」


「あ、ことは。
見てみて、矢吹くんの服かわいいのよ」


(服?)


「あの、恵さん…あんまり散らかさないで…」


おそらく、お姉ちゃんは手伝いに来たのかは不明だけど、矢吹くんの服を見てはしゃいでいる。


「ふふん、じゃあね〜♪」


矢吹くんの服を見るだけ見て帰っていった。


本当に何しに来てたんだ。


やっぱり、単に邪魔しにきていただけなのでは?



「すごい人だね、恵さんって」


(凄い? お姉ちゃんが? どこが?)


どこを見てお姉ちゃんが凄いと感じたのだろうか?


あんなに人の事を、バカにしていじわるしか言わないお姉ちゃんのどこが凄いというのだろうか。


あ、もしかして、なんでもズバズバっと言うところだろうか。


それともキャラを作ってるとこ?


「すごいかな?
お姉ちゃんって結構、性格いい方じゃないよ?」


「うん。
でも、堂々してて悪い事にはちゃんと叱る人でしょ?」


「……まあ、それは、確かに」


お姉ちゃんは基本いじわるだけど、ダメな事には怒る人で辛い時は助けてくれる、そんな人だ。


だから、すべてがすべて良くない人じゃない。


単に口が達者で口が悪く雑なだけだ。


「まあ、あれでも優しいところあるからね…」


「ね、いい人だね」


「…うん」


どちらにしてもよくわからなかった。