「おお、2人共。おかえり」


家に帰るとおじいちゃんに迎えられた。


「どっかに行っとたんかい?」


「うん、友達の家にね」


「ほかほか、矢吹くんもかい?」


「うん、友達のとこ」


おじいちゃんはほこほこと嬉しそうな表情をする。



矢吹くんは先に2階へと上がって行って、私はおじいちゃんと話を続けていた…。


「矢吹くんと仲良くしてくれてるみたいで良かったよ」


おじいちゃんはどこか含みのある言い方をする。


「うん」


「矢吹くん、何か言っとらんかった?」


「えっいや」


肯定しようと頷いた時、先ほど言っていた矢吹くんの言葉を思い出す。


『君の家族はとても仲が良さそうだね。
それに、とても賑やかだ。…なんだか、少し驚いたよ』


と言っていた矢吹くんの表情がとても切なそうだった。


「『仲良さそうで、少し驚いた』って言ってた」


「!…そうか」


おじいちゃんは少し悲しそうな表情で「やっぱりな」と溜息を吐いた。


「やっぱりって……」


「そのままの意味さ。
言ったろ、彼にはある事情を持ってここに来たとね」


「うん…」


「彼は複雑すぎる感情が有り過ぎる」


(複雑すぎる感情?)


それっていったい…。


矢吹くんには、どういう状況があったというのだろうか。


だけど、これ以上は知ってはいけない、そう思った。


そして、最後におじいちゃんある一言を私に吐いた。


「ただ言えるのは、矢吹くんには身内という身内が居ないと言う事だな」


そう言って、おじいちゃんは私から去って行った。



「…………えっ」


(身内が居ない?)


その瞬間、私の中からしばらく一時停止のように止まった感覚が起きたのだった。


身内が居ないってどういう事?