「ていうかそれってさ」


「ん?」


柚里夏ちゃんは含みを持ちながら言葉を出す。



「今、その子と同じ家に暮らしているんでしょ?
今だけかもしんないけど」


「まあ、そうだね」


柚里夏ちゃんは何が言いたいんだろうか。


「それって言わば…同居というかひとつ屋根の下だよね?」


「!」


(ひとつ屋根の下…)


柚里夏ちゃん続けるかのように言葉を発する。


「だって、親戚ならまだしも赤の他人でしょ。
すなわちそういう事じゃない?」


「…確かに」


言われてみれば、そういう表現に捉えられても仕方ないだろう。


確かに赤の他人っていうのは事実だけど、ひとつ屋根の下生活っていうのは、気にしていなかったと思う。


おそらく矢吹くんも気にしていないのだろう。



「じゃあね、また来るね」


「うん、わかった」


柚里夏ちゃんの家に着き、おばさんにも挨拶をして昼食の残りをいれたタッパを紙袋に渡されて、家の前で柚里夏ちゃんにお別れをした。


その直後ふと何気なく矢吹くんがすっと横を通ったのに気付いた。


「!」


当の本人はイヤホンを耳にしていて反対側の方に顔を向けていたので、私の存在には気付いていなかった。


「矢吹くん!」


「えっ」


「!…ことはちゃん?」


大きい声で呼んだのが聞こえたのか、イヤホンに流れてるボリュームがそんなに大きい音じゃなかったのか、矢吹くんはすぐに私に気づき振り向く。


「どっか行ってたの?」


私はたったっと矢吹くんに近付き話し掛けた。


「ああ、うん。
友達の家にね、なんか呼ばれちゃって」


「そうなんだ!」


昨日も友達の家に行っていて遅くなったって言っていたけど、もしかして矢吹くんって…。


と、矢吹くんの視線が私の後ろの方へと向けられる。


「友達かな?」


「!柚里夏ちゃん」


後ろを振り向くといつの間にか柚里夏ちゃんも側に寄ってきていた。


「あ、うん。親友の宇月 柚里夏ちゃん」


と、矢吹くんは同じように柚里夏ちゃんに挨拶をする。


「萩原矢吹です。よろしく」


「あ、よろしく」


柚里夏ちゃんは軽く会釈をし、そのまま柚里夏ちゃんと別れ矢吹くんと一緒に帰ったのだった。