「いい加減にしろって」


矢吹くんはそのまま無理やりお姉さんを引き剥がした。


「矢吹って力なさそうに見えて、けっこう力あるんだよなー」


「見てないで助けろよ!」


「いや、お前なら大丈夫だと思うから」


「どういう意味だよっ」


矢吹くんって雫鈴先輩に対してこんな感じなんだ。


そういや唯一信頼できる人はいるって言っていたけど、雫鈴先輩の事だったんだ。


そうだったんだ。



「ふーくんいじわるー。痛いよー」


「笑いながら痛いって言ってるよ。ドMなのか?」


「しらんがな」


「冷たい〜」


「いつもあんな感じに攻められてるんですか?」


「あんな感じだなー」


お姉さんは中々のすごい性格を持った人だ。



「もしかして、矢吹くんの事好きなのかな?」


「じゃね」


「そう…」


「でも、矢吹は相手にしてないからな。
そもそもあいつの事興味ねえからな」


「………」


「お姉さんには信頼持ってないんですね?」


「うーん、信頼っていうか人としてどうでもいいと感じてるからな」


「ああ…でも雫鈴先輩には信頼されているんですよね?」


「まあ、そこそこね。
でも、興味持っているかは別だけどな」


信頼と興味は別のものなのだろうか。


そういうものなのか。



「ああもう、鬱陶しい。俺に近付いて来んなって」


「ええー。ふーくんちゅーしようよ」


「しないって言ってんだろうが」


「いつもしてるじゃん〜」


「あんたが勝手にしてんだろうがっ」


お姉さんはなんというか、少々しつこい人なんだ。


さすがにああもう鬱陶しいがられていたら、諦めると思うけど、中々のしつこさだ。


なんだか矢吹くんが可哀想に見える。