〈ガチャ〉


と、玄関の扉が開き家の中から雫鈴先輩が出てきた。


「何やっとんのじゃ、家の前で」


「あらー唖桐! ただいま♪」


「ただいまじゃねーよ!
ていうか離れよ、困ってるだろっ」


雫鈴先輩は女性の持ってる鞄をぐいっと引っ張って、無理やり引き離した。


「ちょーっと引き離すにしてももう少し優しくしなさいよ! 仮にもあたしは女なのに」


「はあ?」


「………」


おそらくなんだろうけど、この人は雫鈴先輩のお姉さんなんだと思うんだけど。


仲が悪いんだろうか。



「ていうか、さっさと家の中に入れよ。
さっきからジロジロ見られてるんだけど」


「はーい」


女性は雫鈴先輩に注意されて、大人しく家の中に入っていった。



「ごめんね、うちの姉が。ありがとう、来てくれて」


「い、いえ」


やっぱりお姉さんだったんだ。


「どうぞ」


「おじゃまします」


男の子の家に入るのは初めてだから少し緊張する。


中津くんとはそれなりに話す仲だけど、家は行った事なかったし。



「あ、早いね。すぐ近くまで来てた感じだった?」


「!」


と、2階から矢吹くんが降りてきていた。


「あ、矢吹くん」


「ことー」


「あーふーくん!」


「!?」


矢吹くんが私に声を掛けようとした時、雫鈴先輩のお姉さんが矢吹くんに抱きついた。


(なんかデジャブ感が…)



「ちょっ瑠里さん! 抱きつかないでよ」


矢吹くんはあからさまに嫌がってる。


「いいじゃない! せっかく、久々に会ったのに♪」


「昨日も会いましたよね!」


「ちゅーしよう♪」


「しませんっ」


やっぱりあの人 圧がすごい気がする。



「まーたやってるよ」


「い、いつもの事なんですか?」


「いつもの事」


そう言って雫鈴先輩は飽きれた顔を向けていた。


(いつもの事なんだ…)