「………」


家に帰り自分の部屋で雫鈴先輩に貰った連絡先が書かれた紙を鞄の中から取り出しスマホを開ける。


「えっと」


中には電話番号が書かれていた。


そのまま電話番号をメッセージアプリの検索欄に入力すると、「唖桐」という本名の名前とアイコンにはバスケっとボールを持ったウサギのイラストが出てきた。


「これかな?」


それにしても、かわいいイラストだなっと思った。


「よし、これでいいかな」


今はおそらく部活なのだろうから返事は来ないと思うから、来るとしたら夜だろう。


そんなことを思いながら、私はリビングへと降りた。



田舎から都心の方にきてからの私の生活はいつもふさぎ込む毎日で、学校も休みがちだった。


中学に上がっては登校拒否はしなくなって、バスケをできるようになってよかった。


中学の時はなぜかバスケをしていても苦痛は感じなくて、なんだかんだ言って楽しかった。


でも、高校ではバスケができなくて、授業や助っ人などでバスケをしてもちっとも楽しくなくて苦痛だった。


理由は全く分からないけど、でも最近は小学生の頃のように気持ちがふさぎ込んだり辛い感情になる事が多くなっている気がするのは気のせいではない。


自分でも分からない感情がのしかかってくる気がして気が気じゃない。


本当に治したくても、トラウマがあの頃の記憶が鮮明に焼き付いて、言葉では言い表せないくらいの恐怖とおぞましい感情が遅いかかってくる。


嫌なのに、どにかしたいのに、どうにもできない。


本当の意味で私の恐怖を理解してくれる人なんて居ないんじゃないかと思う。


たとえ、矢吹くんや雫鈴先輩でも無理な気がする。


くるなちゃんでも無理なのだから。


だってくるなちゃんは気持ちがあるだけで、何にもできてないから。


だから、唯一心が落ち着けるのがおばあちゃん家の田舎に行く事だった。


あそこに行くと元気になれるから。



「あっ」


夕食後、部屋に戻ってスマホを見ると雫玲先輩から返信が来ていた。


「……っ」


たかが挨拶しただけなのに、すごく心にこもった文が送られてきていた。


最初から先輩への印象はとてもいい人だった。


くるなちゃんの妹だと知ってても、先輩は変わらず接してくれるなんて、やっぱり変わった先輩なのだろうと思ったりして。