「体調はどう?」


「いつも通りです」


今日は3ヶ月に1回の病院での診察の日だ。


この先生とは小学生の頃から診てくれている先生で、いわゆるかかりつけ医の先生である。


私には子供の頃に受けたトラウマにより精神的な病気を持っており、その病気を発症して以来自分のしたかった事もしたい事も全て出来なくなっていた。


ただ、私の精神的な病気は少しだけ特殊なものだったりする。



「先生」


「ん?」


「トラウマってどうすれば治るんでしょうか?
私はこれからも血や他人を恐れて生きいくしかないんですかね」


「ことはちゃん…」


私には怖い物が多すぎて、何が正しくて何が悪いのか、その心の判断が付けなくなっているのかもしれない。


「ごめんね、そればかりは人に寄るからね。
簡単に治る人と治らない人がいて、君の場合は病気に値するトラウマだから」


「……そうですよね」


自分でも分かってる。


何度も言われてきた事だから。


私の病気は自分の心で精神的なものだから、他人がどうこうするものではなく、気持ちの持ちようなんだ。


ただ、悩んでる思いを相手に話す事で気を楽にさせる事だけなのだろう。


けど、私は自分の隠している病気や心の感情を誰かに言う勇気など到底できない。


そんなの何を思われているか分かったものじゃない。


だってどうせ気味悪がれるに決まってるから、どうしようもないんだ。


理解を求めるだけ時間の無駄だ。



「………」


病院から出ると茜色の夕焼けが照り光っていた。


こんなにも綺麗な夕焼けなのに、私の心はどんよりいつも暗いんだろう。



「あははー」


「もう、待ってよー!」


「ほら、早く早く」


「………」


子供達がはしゃぎながら前を通っていく。


(子供は無邪気だな)


ちょうどあの頃の私はまだ、あんな風に元気いっぱいで悩みごとさえもなかったのだろう。


(羨ましいなぁ)


いつも私は誰かを羨ましがって、でも私はどんなに努力しようが頑張ろうとしても、出来る確率がない。


やろうとしないのではなく出来ないんだ。



『変なのー』



『おかしー』



そっと思い出す心のない声が今でも酷く胸に刺さる。


どうして人は心のない言葉を向けてくるのだろう。


心のない言葉がどれほど辛くて苦しいものか考えた事はあるのだろうか。


私はいつも思う。


いつもいつも思う。


苦しいな、毎日が……。


そう思わずにはいられないんだ。