「では」
私はそのまま教室の方へと戻ろうと、先輩に挨拶をして校舎の方へと振り返った。
「ねえ!」
「!」
と、先輩は私を呼び止める。
「俺、雫鈴 唖桐〈しずれ あぎり〉って言います。
よろしく♪ 月野 ことはちゃん」
そう言って雫鈴先輩は屈託ない笑顔を向けてきた。
「………」
その時、なぜか優しい風が吹いたかのように感じたのは気のせいではない。
初めてだった。
あんな風に上級生から笑顔を向けられたのは。
しかも、あんなにも嬉しそうな。
不思議な人。
不思議な人だったけど、それ以上に優しい人だった。
でも、もし私の秘密を彼に言ったらあの人もあの子らと同じように軽蔑したりするのだろうか。
少しだけ知られているとはいえ、やはり人の目というのは気になる。
矢吹くんみたいに何も気にしないような性格だったらどんなに良かったのだろうか。
私は色んな目や声が気になって仕方ない。
相手の本心を知れば知るほど怖くなる。
きっと良いように思っていないとか、悪い事を思われてるとか、そんな事ばかり考えてしまう。
矢吹くんは、矢吹くんはどう思っているんだろうか。
矢吹くんの本心はよく分からない。
優しいと思えば冷たかったり、冷たいと思えば優しかったり、それに突然の行為に振り回されている気もする。
興味を持ってくれると言ってくれたはいいけど、それも本心なのかも分からない。
私はいつも嘘なのか本心なのか区別出来ず、相手の顔を伺いながら接している自分がいるのも事実だ。
私はそのまま教室の方へと戻ろうと、先輩に挨拶をして校舎の方へと振り返った。
「ねえ!」
「!」
と、先輩は私を呼び止める。
「俺、雫鈴 唖桐〈しずれ あぎり〉って言います。
よろしく♪ 月野 ことはちゃん」
そう言って雫鈴先輩は屈託ない笑顔を向けてきた。
「………」
その時、なぜか優しい風が吹いたかのように感じたのは気のせいではない。
初めてだった。
あんな風に上級生から笑顔を向けられたのは。
しかも、あんなにも嬉しそうな。
不思議な人。
不思議な人だったけど、それ以上に優しい人だった。
でも、もし私の秘密を彼に言ったらあの人もあの子らと同じように軽蔑したりするのだろうか。
少しだけ知られているとはいえ、やはり人の目というのは気になる。
矢吹くんみたいに何も気にしないような性格だったらどんなに良かったのだろうか。
私は色んな目や声が気になって仕方ない。
相手の本心を知れば知るほど怖くなる。
きっと良いように思っていないとか、悪い事を思われてるとか、そんな事ばかり考えてしまう。
矢吹くんは、矢吹くんはどう思っているんだろうか。
矢吹くんの本心はよく分からない。
優しいと思えば冷たかったり、冷たいと思えば優しかったり、それに突然の行為に振り回されている気もする。
興味を持ってくれると言ってくれたはいいけど、それも本心なのかも分からない。
私はいつも嘘なのか本心なのか区別出来ず、相手の顔を伺いながら接している自分がいるのも事実だ。