「そういえば、これ、君の?」


「!?」


そう言って先輩が見せてきたのは、吸入器だった。


(なんで…っ)


吸入器を見せられて、思わず動揺が走った。


(嘘…っ)


「抱き抱えた時に、ポケットからポロっと落ちたんだよね。落ちた時に巾着のゴムが緩んだのかな、吸入器が見えたんだよね」


「…そう、なんですね」


先輩の言葉に動揺していた感情に落ち着きをもたらした。


(見てしまったんだから、しょうがないよね)


「それで、なんでこれ持ってるの? これ…喘息の薬って訳じゃないよね? 一時的なやつだよね」


「その…えっと…体調悪い時たまに発作出る事あって、その…」


本当は言いたくないけど、見てしまったなら仕方ないから。


「そっかあ。ねえ、君は呼吸の病気とかあるの?
中津は喘息ないって言ってたけど…。あ、でも疲れやすいって言ってたっけ」


「…えっと、そういうのはないですけど」


「そうなんだ…じゃあなんで発作起きるんだろう?
疲れやすいから発作って…うーん…もしかして気管が弱いのかな」


私の体に対して考え込みながら心配する仕草をする。



「それって、何か理由があるから?」


「えっと…その」


きっと彼は心配して言ってくれているのだろう。


でも、私はそれに応えられない。


「あの…その…えっと」


(……っ)


どう言ったら…でもでも。


私の事情なんて言えるはずないのに。


「ご、ごめんなさい……」


「えっ」


「ごめんなさい…ごめんなさい…」


動揺するように何度も何度も謝った。


「………っっ」


まるで小さな子供が何かに怯えるかのように、私は謝りながら布団をぎゅっと握りしめて小さく謝り続けた。