君と僕の遥かな想い

ああ、やっぱり目覚めは来るんだ。


「ん…ん…はぁ」


(目、覚めちゃった)


また倒れたんだ、私…。


体調良くないのに、無理して試合なんか出るからだ。


そういえば、中学の時も無理して試合に出て倒れたんだった。


その時はくるなちゃんが助けてくれたからよかったけど、今回は誰が…。



「あ、起きた?」


「!」


声が聞こえどこからと手が伸びてきて、ふわっと頭に置かれる。


(あれ、この人…)


「起きれる?」


「………」


ゆっくりと起き上がると、1人の男子が顔を覗かせて頭を撫でられる。


「大丈夫?」


「………」


この人、確か中津くんの隣にいた先輩だ。


なんで、この人がここに?


この人が助けてくれたのだろうか?


反応しない私に彼は心配そうな表情で顔を伺ってくる。


「あ、はい…」


変に心配されるのも嫌だったので小さく頷いた。


「そっかあ、よかった」


頷くと彼は安心した表情で微笑んだ。


「………」



なんだろう、この人。


いつもくるなちゃんと比較して嫌味を言う人達とは違う気がする。



「あの…えっと…もしかして…私、倒れたんですか?」


少しだけ躊躇しながら彼に私の状況を聞いてみた。


「ああ、うん。びっくりしたよ。終わった後、フラフラした様子で出ていったから、心配になって追いかけたら、急に傾いたからびっくりしたよ。でも、すぐに受け止められたからケガは一切ないよ」


「そうだったんですか。
助けてくれてありがとうございます」


私は少しだけぎこちなく微笑みながらお礼を言った。


「……っ」


「?」


なぜか先輩は手で口を覆いそっぽを向けていた。


「あ、あの…大丈夫ですか?」


「えっ…あっ大丈夫!」


「………」


(顔が赤い)


顔を私の方に向けると、なぜか頬が赤く紅潮していた。


「あの、顔大丈夫ですか? 赤いですよ」


「えっ…!? まじ?」


私の言葉に先輩は驚いて、自分の顔をペタペタと触って確認する。


「………」


その姿が先輩の見た目とイメージと少し異なったように感じ取れたのか、思わずクスっと笑ってしまった。


(かわいい人だな)


「ご、ごめんなさい。笑ってしまって」


「いや、別に」


気を悪くしてしまったんじゃないかと思ったら、むしろ先輩までも微笑むようにクスっと笑っていた。



「やっぱり、思った通りだ」


「えっ」


だけど、先輩の言った言葉に続きはなく、「何が?」とも聞けなかった。


やっぱり不思議な人だ。


いつもと違う向け方をされて、どことなく素直をな気持ちを表わせずにいたのだった。