たったひとつの愛を君に




世界史なんかは単語が呪文みたいで

何度も眠っちゃいそうになった。

けれど前屈みになると背中が痛くなるため

すぐ目が覚めた。

先生に気付かれなくて良かった。

その点では痛みに感謝さえした。



移動教室ばかりで少し手間取ったけれど

杖の私に道を開けてくれたり、

椅子を引いてくれる人も居たりして

何人かに助けられた。



そんなこんなでスクーリング初日は無事に終わった。







たくさんの人に出逢って

たくさんの人に助けられて

私は本当に幸せ者だね

それでもどんな人に出逢っても

あなたが忘れられなかった

あなた知っていた?

早く伝えたくて私あなたを待っていた









あなただけを見ていた

ずっとずっと

あなただけが欲しかった

あなたからの「好き」

それだけを待っていた

他は何も要らない







花月高校に入学して早3ヶ月。

季節はもうすっかり夏だ。

私は順調にレポートやスクーリングをこなしていた。

身体の方はというと、また悪化していた。

気温の変化に弱い為、暑くなってきた最近は

また頻繁に激痛が走る。

まるで身体中にガラスが流れているようだ。

何度かカッターを手にしたけれど

大切な人達を思い出し、思い留まっていた。





摂食障害の方はというと、

良くなったり悪くなったり、一進一退を繰り返していた。

今でも病院には月2回程度通っていた。

これも上手く付き合っていくしかないらしい。

それでも、前程食べられなくなることはなくなっていた。

精神的に安定している方だからだろうか。

その点は良かったところだろう。





そして今日は、久しぶりに蜂と会う日。

これまでは蜂の学校が忙しかったり、

私がレポートをしていたりスクーリングに行っていた為

全然会えずにいた。

星は時間を作って偶に会いに来てくれていた。

だからって蜂にまでそれは求めてないけどね。

その代わり連絡は偶に取っていた。

久しぶりの蜂。

何を話そうか。

何を話してくれるだろうか。

楽しみで昨日は中々寝付けなかった。

寝付けないのはいつものことだけど。





蜂と会うときはいつも頓服を飲んでいる。

あのとき痛みが出るのが嫌だからだ。

今日も飲むと、部屋で待っていた。




___ピンポーン

来た。

15分程前に家を出たとの連絡も来ていた。

いつもより早いけれど、そんな日もあるだろう。

今日は母が居ない為、私が部屋から叫ぶ。

「どうぞー!」

鍵は空いていた。

不用心だとは思うが、私が鍵を開けられない為

仕方がなかった。





それにこの辺はそんなに治安が悪くない。

今でも大丈夫だったし、これからも大丈夫だろう。





そう思っていた。





私が部屋で待っていると、廊下を歩く音がする。

久しぶりの蜂。

私はいつもより少し浮かれていた。

ドアの開く音がする。

ドアに背を向けて座っていた私は

入って来た人物に気付くのが遅れた。





「___んんっ?!」

私はいきなり布の様なもので口を塞がれた。

誰?!蜂じゃない?!

確認したくても口の後目も塞がれて確認出来ない。