目の赤い私に担任は少し驚いたようだったが
母が何も聞かなかった為、担任も黙っていてくれた。
そして2人が席に座ると早速本題に入る。
「学校を休学しようと思うんです。」
私がそう言うと、担任は驚くこともなく
「そうですか、それがいいと思います。今の状態だと通うのは厳しいでしょうし。」
賛成してくれた。良かった。
昨日母と話し合った結果だ。
蜂と別れる以上、学校にこだわる必要もない。
星と会えなくなるのは悲しいけれど
そのうち良くなったら会えばいい。
それに学費だって馬鹿にならない。
医療費だってものすごい額かかるのに、
これ以上母に負担はかけられない。
私は1学期の終わりを機に
学校を休学した。
私にとっての生き甲斐って何だったのだろう
こんなにも呆気なくなくなるものだったのか
あんなにも大切だったはずなのに
簡単に手放してしまった
これで良かったのだろうか
何もかも失った私
独りぼっちの私
殻に閉じこもって
独り嘆いても意味はないのに
何を求めているのだろうか
あの日から2週間が経った。
学校を休学したところで大層生活に変化はなかった。
いつも通り痛みで眠れない夜。
朝方に気を失うように意識を手放す。
目を覚ますのは昼過ぎ。
あった変化といえば、食事ともう1つ。
蜂と別れたのをきっかけに
私は食事が採れなくなっていた。
元から少食で飲み込むのが苦手だったけれど
今はそんなんじゃない。
蜂の言葉、目付き、思い出すだけで苦しくて
何も喉を通らない。
もう1つは自傷行為。
蜂を傷付けることでしか離れられなかった自分、
あんなに素敵な人を嘘であれ傷付けた事実と
蜂から放たれた厳しい言葉を何度も思い出し
最低だと自分を追い詰め、腕を切る。
アームカット、というやつだ。
最初はうっすらとした跡だった。
でもそれも日を追う毎にエスカレートして
今やタオル1枚血だらけになる程だった。
痛む身体に傷だらけの腕、採れない食事。
私はみるみるうちに衰えていった。
45kgあった体重は今や38kg。
腕は傷跡で見るも無残な様子。
心も身体も限界だった。
見兼ねた母が摂食外来を兼ねた精神科に予約をし、
病院へ行くことになった。
診察日当日。
車椅子の私を押す母に連れて行ってもらう。
最初はすぐに疲れていた車椅子にも
もうすっかり慣れていた。
やはりこういう大きな病院は待ち時間が長い。
私は最初の病院を思い出していた。
最初にあの病院へ行ったからこの診断を貰えた。
あの医師と病院には本当に感謝していた。
そんなことを考えていると、名前を呼ばれた。
私の担当医師は厳しそうな女の人だった。
診察室へ入ると医師に、これまでの人生の振り返りを聞かれる。
今までどんなことがあったのか、
家族関係は良好だったのか、
学校生活はどうだったのか…等々だ。
私は少しずつ思い出しながら話していく。
でも何より重要なのはここ最近のことだ。
何故食べられなくなったのか、
何故自傷行為を始めたのか。