「走ろう」



玄関から校門は見えない。
だから、靴を取ってすぐに裏口に走る。

ここは死角になっていて、見えないから校門さえ通らなければうまくいくはず。


…なんであたし、西島くんから逃げてんだろ。
西島くんがなにかしたわけでもないのに。
でも、同じクラスの人たちに。ううん、玉田くんに。
西島くんと一緒にいるとこを見られたくなくて。

やっぱり彼の優しい笑顔が好きだから。
もうバレてるんだとしても、見られたくはない。



「俺を撒けると思ってんの?」


後ろからそんな声が聞こえてきてビクっとする。



「玉田に何言われた?」



ビクついてるあたしの腕を西島君がつかむ。



「玉田、くん?」


「玉田がお前はもう帰ったって言うからよ。絶対おかしいと思ったんだ。俺今日午前授業だったから、お前らの授業終わる少し前からここにいたんだぜ。どうやって帰んだよ」


玉田くん本当に言ってくれたんだ。
なんて別なことを考えてしまう。