ここにくるのは、あの日以来だ



そして、ここにいる人が誰なのかも、私には想像がつく



倉庫内にゆっくりと足を踏み入れると、中には3人いた



翔、昴くん、そして涼さん





「……クロさん。」





翔から出てきた言葉に驚いた



だって翔は、いつも私のことをお嬢さんと呼んでいたから





「ずっと名前が呼べなかった。

信用出来なかった。

裏切り者だった俺にとって、信じることが恐怖だった。





でも、君は違った。
こんな俺を、過去を知ったあとでも信じてくれた。


それが俺の中にあった壁を一瞬で壊した。


もう一度昴と話すことが出来たのも、こうやって3人揃うことが出来たのも、クロさんのお陰なんだよ。」



「姫さんがいなかったら、僕たちはずっとすれ違ったままだった。
だから、ありがとう。」



「2人を引き合わせてくれてありがとな。
俺たちは敵同士になったが、それでも前みたいになりたいと思う。」





あぁ、もう嫌だ



ここにくるまでに何度泣かされただろう



私が許されないことをしたはずなのに、なんでみんなありがとうって言ってくれるの



謝るはずだったのに、私の心はこんなにも嬉しい





「……翔、ごめんね。
翔には私の秘密を隠してもらった。
居なくなろうとしたあの日も、全部分かっていて、それでも送り出してくれてありがとう。
そんな翔の優しさが、大好き。」



「光栄だね。
これからもずっとクロさんには優しくしてあげるからね。」



「凜たちには?」



「それはもうあいつらの頑張り次第だよね。」





いつも通りのやりとりに笑ってしまう



そんな時、2階に拓斗を初めとするBlue skyのみんながこっちを覗いていたのに気づいた



ひらひらと手を振る拓斗に、ペコリと頭を下げる





「さぁ、クロさん。
いよいよ最後の場所だよ。
言えなかった思い、全部あいつに伝えてやって。
本当は、あいつがREDMOONの中で一番の寂しがり屋なんだ。」





そういって渡されたのは、私が翔のメガネをかけている写真



翔はそんな私を後ろから見て微笑んでいた



これからは……隣で写ろうね



裏には今までと同じように場所が書かれていた



私にとって、一番の思い出がある場所