着いた先は麓絽のいる病院だった



見慣れた廊下を通り、部屋の前に立つ



凜がうるさい人って言ってたのを思い出して、少し笑ってしまった



確かにうるさい人



だけど、しっかり自分の言葉で人と向き合うことができる人



ガラッと扉を開くと、こちらに背を向けて病室のベッドに座っている人がいた





「待ちくたびれたで。
よぉ来たな、クロ。」



「遅くなってごめんね、慧。」



「まぁ座りぃや。」





ポンポンと自分の横を叩く慧



私は歩いて慧の隣に座った





「お前、俺がまだ組と繋がっとった時、こっそり雅に会いに来てたんやってな。」



「雅ちゃんに聞いたの?」



「いや、あいつは何も言わへん。
看護師の人に、お姉さんもよく来るんですよって言われたんや。
俺のよく知る女はクロしかおらんしな。」



「……ごめんね、勝手に雅ちゃんと仲良くなって。」



「なんで謝んねん。
雅が学校に行きたいことも、友達と話してみたいと思っとることも知っとった。
それでも何も出来んかった俺と違って、クロは雅の友達になってくれた。
逆に感謝やっちゅーねん。」





慧の言葉は、いつだってまっすぐだった



例え自分を押し殺してでも貫き通すその姿は、本当に立派だと思う





「だからな、勝手にいなくなんなや。
雅の友達まだクロしかおらんねんから。
それに、俺だってクロがいなくなったら困んねん。」





そういって私の手をそっと握る慧



慧の方を見ると、反対側を向いていて、耳が赤くなっていた





「クロがおらんかった時、寂しかった。


誰も俺と凜の喧嘩を止めてくれるやつもおらんくて、虚しかった。


俺の言葉一つ一つに笑ってくれるやつがおらんくなった。


俺の中には、もうクロがおんねん。


あんな、クロが1枚もおらんアルバムもろても嬉しくない。


今さら、いなかったことには出来んのや。


だから、これからも俺の隣で俺に向けて笑ってくれ。


それだけでどんな苦しくても救われんねん。」






さっきよりも力強く握られたその手に、私はまた誓う



もう二度と、みんなから離れないと





「慧、ありがとう。
私、慧と出会えて本当に良かった。」



「んなもん当たり前や。
ほな、早く次のとこに行き。」





慧がくれた写真は、私が慧のバイクの後ろに乗って二人で倉庫内を爆走している写真



わざと速くしたりするから絶叫マシンに乗った気分だった



でも、写真の中の私は、叫びながらも笑っていた



次は……Blue sky