「ここらへんって……」



「前の研究所があった所から近いな。」





前の研究所……私たちがいた場所



今思い出すと、たくさんの感情が入り交じるけれど、今は目的を果たそう



公園に入ると、ひときわ大きな木を見上げる人がいた



後ろ姿だけでも分かる



ずっと1人で責任を背負っていたその背中に、私が触れることは許されるだろうか





「凜……。」



「クロちゃん。
ここね、新と初めて会った場所なんだ。
あの日からたくさん色んなことあったけど、嫌なことなんて1つもなかった。」





振り向いた凜に、謝罪の言葉を述べようと口を開く





「何も言わないでいいよ。」



「……え?」



「僕はね、クロちゃんが大好きなんだ。
だからクロちゃんが謝ったりすると悲しくなる。


クロちゃんは、僕たちを守ろうとしてくれた。
僕の過去を受け入れて、一緒に背負ってくれた。


他の人からしたら小さなことかもしれないけど、僕はとっても嬉しかったんだ。


だからね、クロちゃんが謝る必要なんてないんだよ。


クロちゃん、本当にありがとう。」





そう言って笑う凜が、だんだん歪んで見えて、涙で見えなくなった





「泣かないでよ~!!
クロちゃんがいなくなっちゃったら、誰が僕と慧の喧嘩止めてくれるのさ~。」





私を抱きしめて、ポンポンとあやしてくれる凜



なんで



なんでみんなこんなに優しいの





「クロちゃん。
これからもREDMOONにいてくれる?」



「……うん。
これからもこんな私と仲良くしてくれる?」



「もっちろん!!
じゃあ、これどうぞ。」





凜がくれたのは、凜が私にお菓子を食べさせてくれている写真



この光景も頭の中にちゃんとある





「次はちょっとうるさい人だから気をつけてね。」





裏には、私のよく知る部屋番号が書いてあった