倉庫を出たらシロ兄が待ってくれていて、バイクを学校まで走らせてくれた



でも、なんで保健室……?



保健室の扉を開けると中には誰もいなかった



否、ゆっくりと奥へ進むと……一番奥のベッド



窓の外をぼんやりと眺めている紫苑がいた



紫苑は、私に気づくとこっちを向いた





「……クロ。」



「紫苑、どうして……」





言い切る前に、紫苑に抱きしめられた





「紫苑……?」



「やっと……やっと会えた……っ」





震えている紫苑の身体



その背中におずおずと手を回す



一度はその権利さえ失くしたけれど





「ごめん、ごめんね紫苑。」



「……ずっと一緒って言った。」



「うん。」



「……空っぽなんかじゃないって言った。」



「うん。」



「……誓った。
空っぽなんかじゃないって言ってくれたクロを。
あの日、ここで泣いてたクロを守るって。
それなのに……俺の前からいなくならないで。」





あの日、自分のすべきことが分からなくて泣いてた私を、まだ私を警戒してた紫苑が抱きしめてくれた



きっと勇気を出してそうしてくれた



だからこそ、それがあったかかった



私はそれに救われた





「うん。ごめんね。
紫苑の気持ちを無視して、何も言わずにいなくなったりして。


たくさん謝らなきゃいけないことがある。
でも、たくさんありがとうもある。


あの日、私を慰めてくれてありがとう。
暴走の日、私をバイクに乗せてくれてありがとう。
私、紫苑にちゃんと守られてたよ。」





また涙が溢れる



思い出が溢れるたび、幸せだった時間が蘇っていく



私は……こんなにも救われていた



耳元で紫苑が嗚咽を堪える気配がした



紫苑が泣くのを見るのは初めてで、それがどんな意味なのかを悟って、また涙が出た



2人で嗚咽を堪えながら泣いた



ひとしきり泣き終わると、紫苑が1枚の写真を出した





「……もう、いなくならないで。
ずっと俺のそばにいて。」





それは紫苑と私が寄り添って寝ている写真



私の見覚えのない写真



きっと凜あたりがイタズラで撮ったんだろう



でも、紫苑も私もどこか微笑んで見えて





「うん。もういなくならないよ。」





そういって私たちは指切りをした



写真の裏には、ある公園の名前が書かれていた