REDMOONの倉庫の前に立つ



ここを離れてもう1ヶ月か……



あんな酷いことを言って、最悪な別れ方をして、後ろめたい気持ちで出たことを覚えている



なかなか一歩が踏み出せない



拒否されたら……



その時、私の手をシロ兄が優しく握ってくれた





「大丈夫。
クロが選んだ子たちだろう?
ちゃんと理由を話せばきっと分かってくれる。
さぁ、行っておいで。」





シロ兄のささやかな勇気をもらって、自分を奮い立たせる



みんなが傷ついた分を、今度は私が受ける番だ



怖気づいてちゃいけない



一歩を踏み出すと、何故かそのあとは普通に歩けた



中に入ると、下っ端くんたちがいた



私を見て険しい表情をする下っ端くんたち



みんながそんな顔するのは当たり前だ



そうさせてるのは私なんだから



でも、伝えなきゃ



私はここに来れて幸せだったんだって









「みんな……ごめんなさい。
みんなが大切にしてるREDMOONを貶して罵倒して、蔑んだ。


みんながここをホームみたいに思っていること知ってて……私もみんなに受け入れてもらえた身だったのに。






許してなんて言わない。
謝ったくらいで償えるなんて図々しいから。
でも……これだけは分かってほしいの。


1人ぼっちで何も知らなかった私を、ここは、みんなは、優しく受け入れてくれた。


それがとても嬉しかった。
みんなとわいわいやるのも、みんなと一緒に走るのもすごい楽しかった。


こんな私に、温もりをくれてありがとう。」









深く頭を下げる



こんな形で分かってもらえるなんて思ってないけど、それでも少しでも伝わってくれたなら……



沈黙が私たちを包む





「……顔をあげてください。」





ゆっくりと顔を上げると、ナオくんが険しい表情から一転、優しく微笑んだ





「クロさん、謝らないで。
俺たちはクロさんに感謝してるんです。」



「感謝……?」



「クロさんが来てくれて、ここは変わりました。


幹部の皆さんはいつも楽しそうで、あの長でさえ笑っていた。
俺たちの前であの人たちがあんな表情するのは稀なんです。


あの人たちは俺たちの上に立つという責任から、いつもどこか俺たちと違って見えて……でも、あの人たちも普通の高校生なんだなって思いました。



クロさんがいてくれたからこそです。
蝶だからとかじゃない。


これからもクロさんはクロさんとして、俺たちのそばにいて欲しいです。」





ナオくんの言葉を筆頭に、下っ端くんたちが口々にありがとうって言ってくれた





「みんな……」





涙腺がみるみる緩んで、涙が溢れ出た





「わわ、泣かないでくださいっ。
あの、これっ。」





そう言って渡されたのは1枚の写真



その写真には、私も含めて全員が映っていた





「ここもクロさんのホームです!
裏を見て、次の場所へ行ってくださいね。」





写真の裏には、手書きで「保健室」と書かれていた