「そんなことしなくていい。」
耳元で聞こえた声
それと同時に、後ろから抱きしめられた
「クロ。俺の分までよく頑張った。
遅くなってごめんな。」
その声を聞いて、私の瞳から自然と涙がボロボロ零れ落ちる
ずっと……ずっと探してた
この懐かしい声を
この優しいあったかさを
離れていても、忘れたことなんてなかった
「……シロ……兄……っ。」
ゆっくりと振り向くと、シロ兄は優しく微笑んで私の頭を撫でてくれた
「大きくなったな……。」
その言葉に、また胸が締めつけられて涙が溢れる
シロ兄に会ったら伝えたいことがたくさんあったのに、言葉に出来なくて
「No.1。
やはり一番厄介なのはお前だったな。」
シロ兄は振り返って明彦さんを睨みつける
「まだこんなことを続けているのか。
意味がないと自分でも分かっているくせに。
まるで、水の中でもがき続ける害虫みたいだな。」
「……お前にわかるか?
俺がこの研究に捧げたものの大きさが。
この世界を平和にしたいと願って何が悪い。
そのためにお前たちに力を植え付けたというのに、完璧にシンクロしたにも関わらず、その使命を放棄した。
お前たちがいなくなったあと、どれほどの子供たちが犠牲になったか……。」
ここにいる子供たちもその犠牲者……
私たちが逃げたことで、死んじゃった子供たちがたくさんいる……
「ならば、お前には俺たちの気持ちが分かるか?
信じていた人に裏切られ実験体となった。
外の世界に出た俺たちに待っていたのは絶望だったよ。
存在だけで危険な俺たちは、それだけで色んなやつらから狙われた。
俺たちが何をした?
俺たちはただ普通に生きたかっただけだ。
俺たちに優しく手を差し伸べてくれた人たちを守りたいと願っただけだ。
お前は俺たちよりも長く生きていて、そんなことも分からないのか?」
シロ兄が目の前にいる
それだけで心強かった
私よりも多くのものを背負ってもなお、凛と立っている
「いつまでも俺たちに縋るな。
そんなことしたって、お前の両親は戻ってこないだろうが。」